大貫隆志他編著『「指導死」−追いつめられ、死を選んだ七人の子どもたち。』と、いじめ問題・子どもに対する『暴力』(体罰)・いじめ防止法などについて

大貫隆志他編著
『「指導死−追いつめられ、死を選んだ七人の子どもたち。』と
いじめ問題・子どもに対する『暴力』(体罰)・いじめ防止法などについて


                                       2013年5月28日(火)
5月30日(木)更新


 私は、約30年前の『葬式ごっこ』で有名な、中野富士見中事件(鹿川裕史くんいじめ自殺事件、裁判をするのに約8年かかりました。約5年かかった一審の東京地裁は敗訴しましたが、全ての新聞の社説は「いじめ問題に無理解な判決である」と批判しました。二審の東京高裁の判決で勝訴しました。日弁連編『問われる子どもの人権 子どもの権利条約・日弁連レポート 日本の子どもたちがかかえるこれだけの問題』駒草出版 253頁参照)の両親から、裁判を依頼された代理人弁護士の一人です。

 この約30年間いじめ問題についての本質は、未だに変わらないと思います。


 さて、今般、下記の本が出版されました。



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 大貫隆志(「指導死」親の会代表世話人)住友 剛(京都精華大学准教授)、武田さち子(教育評論家)編著
 『「指導死」−追いつめられ、死を選んだ七人の子どもたち。』
 2013年5月15日発行 高文研1700円税


 この本は、いじめ問題日弁連『自由と正義』2013年4月号 特集1「いじめ問題と子どもの権利」8頁〜40頁参照)体罰問題を考えるのに、最適の本であると思います。

 早速読みましたが、凄い内容の、最高の本です。
 高文研は5月26日の朝日新聞一面で広告しています。


 内容のごく一部を紹介致します。
 まず「指導死とは何かを冷静に分析されています。


 1ページ2ページには、
「『指導死』は、生徒指導をきっかけに子どもを自殺で失った遺族の間で生まれた、新しい言葉です。『生徒指導をきっかけ、あるいは原因とした子どもの自殺』を意味します。
・・・つい最近までは、限られた自殺遺族の間でだけ通用する、特別の言葉でした。
・・・『生徒指導は、すべての児童生徒のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに、
学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになることを目指しています。(文部科学省生徒指導提要第1章第1節平成22年4月2日)』とされています。
この目的に沿った生徒指導が行われるならば、それをきっかけに子どもが自殺するなど考えられないことです。
しかし、実際には、『生徒指導の結果としての自殺』としか思えない事件が少なからず起こっています。
新聞などの報道を元に、教育評論家の武田さち子さんがまとめたデータによれば、
1952年から2013年までの間に、『指導死』と思われる自殺が68件(うち5件は未遂)起こっています。」

などと冷静に優れた分析をされています。


 大貫隆志さんのご次男の陵平(りょうへい)くん(13歳)は、2000年9月30日自宅マンション(10階)から飛び降り自殺しました。

 陵平くんのお父さん(大貫隆志さん)お母さんは、1999年7月に離婚されました。

16ページ
「…子どもたちと別々の暮らしをはじめるとき、陵平は『どうして?』と悲しそうに私に尋ねました。その寂しそうな声は、いまでも耳を離れません。…………
でも、私は子どもの気持ちをまるで理解できていなかったのでしょう。
陵平の生きる力の半分以上を,私は奪っていたのかもしれません。」

 大貫隆志さんは、自分を冷静に分析されており、感動させられます。


 17ページ18ページに家族全員の思い出が一部書かれていますが、私は何度も涙なしには読むことが出来ませんでした。

「《真夏の登山やオートバイのレース   忘れられない陵平との楽しかった時間》 ……………」


 大事な、いくつかの論点について分析し、評価されています。

235ページ
「《第三者調査委員会で最も重要なことは『第三者性』の確保》
大津市男子生徒自殺事件では…
画期的な成果(※注1)があがった…
この調査委員会が中立性を確保していたこと、
つまり文字どおり『第三者』であったことが重要です。…

大阪・市立桜宮高校2年の男子生徒(17歳)が昨年12月下旬に自殺…
この外部監察チームは大阪市教育委員会と協力して調査を実施。
わずか1ヶ月後の2月13日には報告書(※注2)をとりまとめました。
報告書では、男子生徒がキャプテンを務めていたバスケットボール部の活動で、
顧問教諭からたびたび暴力を受け、自殺に追いこまれていくプロセスが明らかにされました。……」

243ページ以下で自己史を率直に書かれ、多くの仲間と議論し、連帯し、応援しあう闘いの方向性が触れられています。


241ページ
「《おわりに》
…初めて〈全国学校事故・事件を語る会〉に参加したときには、
神戸がずいぶん遠いところに思えました。
それが今では、事情が許す限り、北海道でも九州でも、
遺族の応援に駆けつけるようになりました。
たくさんの遺族に会い、たくさんの命の悲しい最後を知り、
許しがたい大人の怠惰に直面し、
社会の無関心に絶望しました。
『これ以上,子どもを殺さないでください』

私は、この思いに共感してくれる人を
少しでも増やしたいと思って活動してきました。……………
この言葉で締めくくろうと思ってきた言葉…
陵平の年齢と同じ、13年を費やしました。

『陵平、一緒にいてくれてありがとう』
2013年4月
大貫隆志」


 この優れた最高の本を、直ちに買いましょう!
 子どもの権利・人権を考えるには必読・必須です。
 希望も感ずる珍しい本と感じました。


 来週には「いじめ対策法」国会で成立しそうです


 大貫隆志編著『指導死』に学びながら、与野党それぞれの法案について、よい点をまとめるように、問題意識を持って少しでも動いてみるべきと思います。

与党案=「昔からの精神主義・厳罰化路線そのまま。」「実効性に乏しい。」「学校の文化を土台から変えなければ解決できない。」「大津の中学校は、道徳教育のモデル校だったが、現に事件を防げなかった。」−−尾木直樹さん

野党案=「第三者委の調査には、強制力が働く方がいい。」「教育委と学校が持っている証拠をすべて開示するくらいの協力態勢があってもいい。この点は与野党双方の法案に言及がなかった。」「子どもの『尊厳を害する』とする野党案が評価できる。」−−弁護士横山巌さん、
「野党案はよく練れている。」「対策への子どもの参加を入れた点が大きい。」「被害者の視点も大切にし、教育委の『対策委』の委員いじめられた経験者その保護者を任命する選択肢を盛り込んだ。」−−尾木直樹さん


※注1 「大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会の調査報告書」は、
下記URLに全編掲載されています。
http://www.city.otsu.shiga.jp/www/contents/1359682792674/ 

※注2 「桜宮高等学校の事案にかかる外部監査チームからの報告書」は、下記URLに全編掲載されています。
http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000217951.html


 
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