藤本俊明 神奈川大学講師 のレクチャー「国際人権法からみた東日本大震災−国連・社会権規約を中心に」

藤本 俊明 神奈川大学講師のレクチャー
国際人権法からみた東日本大震災
−国連・社会権規約を中心に」

                                            2011年8月16日

 2011年7月15日、日弁連国際人権問題委員会の夏季合宿(於 軽井沢)において、藤本俊明先生(神奈川大学・武蔵野大学・東京女学館大学・愛知県立大学・山梨学院大学講師、国際法・国際人権法)のレクチャーが行われました。
 藤本先生とは、久しぶりにお会いすることが出来、極めて有意義な時間を過ごさせて頂きました。当日のレジュメを添付いたします。

 なお、2011年8月15日には、藤本先生から、社会権規約第3回日本報告書審査について情報をいただきましたので、そのことも併せてご紹介します。


 
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レクチャーをする藤本俊明 神奈川大学講師、
右は宮家俊治 国際人権問題委員会事務局長、
崔 信義 同副委員長など




 




2011/07/15@日弁連国際人権問題委員会
第68回国際人権に関する研究会

国際人権法から見た東日本大震災 ―社会権規約を中心に
神奈川大学ほか(国際人権法)/社会権規約NGOレポート連絡会議
藤本俊明
                                                   
はじめに
 
報告の目的
 117から311へ  忘れ続けられた人権 もう一つの国際人権規約


機‥貽本大震災の概観
1 地震・津波
2 原発事故

供‥貽本大震災における人権保障
1 人権を基礎とした復旧・復興と災害対策・原発行政
   国内避難民に関する指導原則
   自然災害被災者保護ガイドライン
2 社会権規約をはじめとした人権諸条約と関連文書の適用可能性
 (1) 社会権規約委員会による総括所見[第2回日本政府報告書審査](2001年9月24日)
  |録椋匈
   「27.委員会は,阪神淡路大震災ののち兵庫県が計画および遂行した大規模な再定住プログラムにもかかわらず,もっとも大きな影響を受けた層がかならずしも充分な協議の対象とされず,その結果,ひとり暮らしの多くの高齢者が現在,個人的な注意をほとんどまたはまったく向けられないまま,まったく馴染みのない環境下で生活していることを懸念する。家族を失った人々に対しても,精神的または心理的治療がほとんどまたはまったく提供されていない模様である。再定住した60歳以上の被災者の多くは,コミュニティ・センターがなく,保健所を利用できず,かつ外来看護を受けることができないでいる。」

「28.委員会は,阪神淡路地域に住む地震の被災者の貧困層にとって,住宅再建資金の調達がますます困難なものとなりつつあることに懸念とともに留意する。自宅を再建できないまま,すでに負っている住宅ローンを清算するために資産売却を余儀なくされた人々も存在する。」

「54.委員会は,締約国が,兵庫県に対し,とくに高齢者および障害のある人々に対するコミュニティ・サービスを改善および拡大するよう奨励することを勧告する。」

「55.委員会は,締約国が,規約第11条にもとづく義務にしたがい,継続する住宅ローンの支払いのため地震の被災者の貧困層が資産を売却しなければならなくなる状況を回避するのを援助することを目的として,このような被災者が倒壊した家屋の再建のために住宅金融公庫または銀行に対して負った財政上の義務を履行するのを援助するための効果的な措置を迅速にとるよう勧告する。」

  原子力発電所事故
「22.委員会は,原子力発電所で事故が生じているとの報告があること,そのような施設の安全性に関して透明性が欠けておりかつ必要な情報公開が行なわれていないこと,および,原子力事故の防止および処理に関して全国規模および地域規模で事前の備えが行なわれていないことを,懸念する。」

「49.委員会は,原子力発電施設の安全性に関わる問題について透明性を向上させ,かつ関係住民に対してあらゆる必要な情報をいっそう公開することを勧告し,さらに,締約国に対し,原子力事故の防止および事故に対する早期対応のための計画の作成を促進するよう促す。」

    *第3回政府報告書(2009年12月)での回答
「原子力の安全に対する国民や立地地域の住民の皆様の理解を得るためには,原子力安全規制に関し,十分な説明を行い,御意見を伺うことが重要と認識している。原子力安全に関する情報については,これまでもさまざまな機会や媒体を通じて適切に公開している。経済産業省原子力安全・保安院においては,主要立地地域に原子力安全地域広報官を配置して体制を整え,原子力の安全規制に関し,原子力立地地域の自治体,地元議会,住民に説明するとともに,パンフレットの作成・配布等を積極的に行うなど,情報公開の体制強化を図っており,今後とも,原子力安全規制に対する国民からの理解の増進に最大限の努力をするとともに,事業者に対しては,安全に係る情報公開や対外説明をしっかり行うよう指導したいと考えている。

「我が国の防災に関する基本的な法律である災害対策基本法に基づく防災基本計画には,原子力災害対策編が設けられており,原子力災害対策の基本として,原子力災害の発生及び拡大を防止し,原子力災害の復旧を図るために必要な対策について定めている。防災基本計画に基づき,関係省庁は防災業務計画,都道府県・市町村は地域防災計画を策定し,関係省庁の所掌事務や当該都道府県・市町村の区域に関するより具体的な対策を定めている。原子力災害対策特別措置法に基づき,原子力事業者は,原子力事業所毎に原子力事業者防災業務計画を策定し,原子力災害予防対策,緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策等に関し定めている。」

 (2) 最低限の中核的義務(minimum core obligation)違反の可能性
社会権規約委員会 一般的意見3(1990年)「締約国の義務の性質」
「10  10年以上の期間締約国の報告を審査して委員会及び先行機関の得た多くの経験に基づき,委員会は,最低でも,各権利の最低限の不可欠なレベルの充足を確保することは各締約国に課された最低限の中核的義務であるという見解である。従って例えば,相当数の個人が不可欠な食料,不可欠な基本的健康保護,基本的な住居又は最も基本的な形態の教育を剥奪されている締約国は,規約上の義務の履行を怠っているという推定を受ける。もし規約がそのような最低限の中核的義務を設定していないものと読まれるならば,規約はその存在理由を大部分奪われるであろう。なお,ある国がその最低限の中核的義務を履行したか否かの判断にあたっては,当該国の制約をも考慮に入れなければならない。第2条1項は各締約国に,「その利用可能な資源を最大限利用することにより」必要な措置を取ることを義務づけている。締約国が少なくともその最低限の中核的義務を履行できないことを利用できる資源の制約に帰するためには,当該国は,これらの最低限の義務を優先事項として充足するためにその利用可能なすべての資源を用いるためあらゆる努力がなされたことを証明しなければならない。

「11 しかし委員会は,たとえ利用可能な資源が不十分であることが示されうる場合でも,現状において関連権利のできる限り広範な享受を確保するため尽力することは締約国の義務として残ることを強調したい。さらに,経済的,社会的及び文化的権利の実現,又は特に未実現の程度を監視し,かつこれらの権利の促進のための戦略及び計画を考案する義務は,いずれにしても,資源の制約の結果消滅するものではない。委員会はすでにこれらの問題について一般的意見第1で扱った。」

 (3) 一般的制限条項(規約4条)の適用の可能性



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レクチャーをされる藤本俊明 神奈川大学講師、
右は宮家俊治 国際人権問題委員会事務局長




掘|録漫δ吐箸伴匆餮規約
1 居住に対する権利(規約11条1項)
  社会権規約委員会 一般的意見4(1991年)「住居に対する権利」
           一般的意見7(1997年)「強制退去」
  →(殕の法的安全
▲機璽咼后な資,設備及びインフラストラクチャーの利用可能性
I蘆寛椎柔(affordability)
さ鐔参椎柔(habitability)
ゥ▲セス可能性(accessibility)
場所(location)
文化的相当性
2 健康に対する権利(規約12条)
  社会権規約委員会 一般的意見14(2000年)「健康に対する権利」
  →〕用可能性
▲▲セス可能性   無差別
              物理的なアクセス可能性
              経済的なアクセス可能性(負担可能性)
              情報のアクセス可能性
受容可能性
ぅオリティ

    ◎中核的義務
→〔戯絞姪に、特に、脆弱な又は周辺に追いやられた集団のための、保健施設、物資及びサービスへのアクセスの権利の確保
栄養的に十分かつ安全な最低限の不可欠な食料へのアクセスの確保
4霑壇な居所、住居及び衛生、並びに安全な飲み水の十分な供給へのアクセスの確保
ど要不可欠な薬品の供給
イ垢戮討諒欸鮖楡漾∧資及びサービスの衡平な配分の確保
Ρ岾愿な根拠に基づく全国的な公的保健戦略及び行動計画の採択と実施
3 十分な生活水準に対する権利(規約11条)
  社会権規約委員会 一般的意見12(1999年)「食料に対する権利」
           一般的意見15(2002年)「水に対する権利」
一般的意見19(2008年)「社会保障に対する権利」
4 労働・雇用に対する権利(規約6条)
   社会権規約委員会 一般的意見18(2005年)「労働に対する権利」

検仝胸厠枠電所事故と社会権規約
1 居住に対する権利(規約11条1項)
  社会権規約委員会 一般的意見4(1991年)「住居に対する権利」
           一般的意見7(1997年)「強制退去」
2 健康に対する権利(規約12条)
  社会権規約委員会 一般的意見14(2000年)「健康に対する権利」
  →第12条2項(b) 健康的な自然及び職場環境に対する権利
「15 「環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善」(12条2項(b))は,とりわけ,職業上の事故及び疾病に関する防止措置,安全な飲み水の十分な供給及び基本的な衛生を確保する必要性,人々が放射能及び有害化学物質のような有害物質,又はその他人間の健康に直接もしくは間接的に影響を与える有害な環境条件にさらされることの防止及び削減からなる。さらに,産業衛生は,合理的に実行可能な限りにおいて,労働環境に内在する健康への危険の原因を最小にすることをさす。 第12条2項(b)はまた,十分な住居及び衛生的な労働条件,十分な食料供給及び適切な栄養をも包含し,アルコールの濫用並びに,たばこ,薬物及びその他の有害物質の使用を戒めている。」
(1) 福島県を中心とした被災地
(2) 原発事故作業従事者(7条(b))
(3) 被災地圏外    ⇒放射能汚染,食料等の安全
 社会権規約委員会 一般的意見12(1999年)「食料に対する権利」
          一般的意見15(2002年)「水に対する権利」
3 十分な生活水準に対する権利(規約11条)
  社会権規約委員会 一般的意見19(2008年)「社会保障に対する権利」
4 労働・雇用に対する権利(規約6条)
  社会権規約委員会 一般的意見18(2005年)「労働に対する権利」
(1) 福島県を中心とした被災地
(2) 被災地圏外
 5 「フクシマ差別」 居住地(出身地)による差別・復旧(復興)格差
   社会権規約委員会 一般的意見20(2009年)「非差別」
   「34.例えばある個人が暮らしているもしくは登録されているのが,都市部か農村地域か,公式な定住か非公式な入植集落か,国内避難民になっているか遊牧民の生活様式を送っているかなど,規約上の権利の行使は,人の現在のもしくは以前の居住地を条件にしたり,それにより決定されたりすべきでない。地方間及び地域間の格差は,例えば一次医療機関,二次医療機関及び緩和ケア医療機関の,利用可能性及び質において,公平な分配が存在することを確保することにより,実際問題として撤廃すべきである。」


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懇親会における藤本俊明 神奈川大学講師



后/椋匱綣(マイノリティ・社会的弱者)の権利
1 子ども   ⇒震災遺児,教育(規約13条)
  社会権規約委員会 一般的意見13(1999年)「教育への権利」
  子どもの権利条約
2 女性
  社会権規約委員会 一般的意見16(2005年)「男女平等対する権利」
  女性差別撤廃条約
3 医療を必要とする人々
  社会権規約委員会 一般的意見14(2000年)「健康に対する権利」
4 高齢者・要介護者
  社会権規約委員会 一般的意見6(1995年)「高齢者の権利」
5 障害者
  社会権規約委員会 一般的意見5(1994年)「障害者の権利」
  障害者権利条約
6 外国人・難民
  社会権規約委員会 一般的意見20(2009年)「非差別」
  人種差別撤廃条約・難民条約
7 受刑者・被拘禁者
 *自由権規約その他の人権条約上の権利

此ー匆餮規約の国際的・国内的実施
1 政府報告書改訂の必要
   震災前(2009年12月)に作成
  「NGOと政府の対話」の再設定
2 個人通報制度
他の人権条約と併せた早期批准   未発効(署名36,批准:エクアドル,モンゴル,スペイン)
3 国内人権機関
  社会権規約委員会 一般的意見10(1998年)「社会権の実施と国内人権機関」
4 災害対策・原発行政と人権
    人権の観点から震災を検証する機関の必要
   →社会権規約委員会による総括所見[第2回日本政府報告書審査](2001年9月24日)
「33.委員会は,締約国に対し,(略)規約の規定が立法上および行政上の政策ならびに意思決定過程で考慮にいれられることを確保するため,締約国が環境影響評価〔環境アセスメント〕と同様の「人権影響評価」その他の措置を導入することも奨励されるところである。」

 第3回政府報告書(2009年12月)での回答
「我が国の立場については,「最終見解に関する締約国の意見」4.(1)に述べたとおりである。また,立法上及び行政上の政策,意思決定の過程において,人権への影響を事前にチェックする「人権影響評価」の制度については,そもそもそのような制度を設けることが可能かどうか,仮に可能とした場合にいかなる機関がそのような評価を行うのが適当であるかを含め広範にわたる検討が必要であり,政府として,現時点での導入は考えていない。
 *国内法,行政上の救済手続き
 *UN−HABITAT,WHO,FAO,IAEAなど関係国際機関
 *ハイチ大地震などの事例

おわりに
 忘れ続けられた人権と社会権規約第3回日本政府報告書審査
    震災後最初の国際的審査?
    社会権規約委員会48thPWG(2012.5.21-25)審議予定 →早ければ2012年11月審査?
 東日本大震災の歴史的・社会的意味と学問のあり方 国際人権法学の意義
    911から311へ
    ヒロシマ・ナガサキからフクシマへ
    オキナワからフクシマへ


●参考文献:
 近畿弁護士会連合会編著・阿部浩己監訳『救済はいつの日か 豊かな国の居住権侵害』エピック
  熊野勝之編著『奪われた「居住の権利」 阪神大震災と国際人権規約』エピック
社会権規約NGOレポート連絡会議編『社会権規約と日本2001』エイデル研究所
社会権規約NGOレポート連絡会議編『国際社会から見た日本の社会権』現代人文社
  阿部浩己・今井直・藤本俊明『テキストブック国際人権法(第3版)』日本評論社

●参考 社会権規約第3回日本政府報告書審査 NGOレポート構成案
第1部 全体的検証
 1 社会権規約の実施と日本社会(貧困拡大を含む全体状況など)
  2 報告制度への政府の対応(前回総括所見の達成度評価を含む)
  3 報告作成過程における問題点
  4 国内における規約の広報・研修
  5 国内裁判所における社会権規約
  6 国内人権機関
  7 個人通報制度
第2部 個別的検証(主体別)
  1 子ども                  9 ホームレスの人々
  2 女性                   10 難民(申請者)
  3 被差別部落出身者             11 入管収容者
  4 在日コリアン               12 セクシュアル・マイノリティ
5 外国人(ニュー・カマー)         13 ハンセン病患者
  6 中国帰国者                14 アイヌ民族
  7 障害者                  15 沖縄住民
  8 HIV感染者及びAIDS患者 
第3部 個別的検証(テーマ別)
  1 労働・雇用          8 健康・医療
  2 家族の保護          9 環境・原発
  3 保育             10 教育
  4 貧困             11 文化
5 社会保障           12 科学技術(情報格差含む)
  6 居住             13 自殺(震災関連自殺含む)
  7 国際協力・ODA
第4部 東日本大震災と社会権規約
  →本日の報告内容を中心に構成予定




From: "Toshiaki FUJIMOTO【藤本俊明】"
Sent: Monday, August 15, 2011 12:01 PM
Subject: 【転送歓迎】社会権規約NGOレポート連絡会議開催のご案内


約10年ぶりとなる社会権規約日本審査が迫りました。
特に今回は,事実上,震災後最初の日本の審査となることからも,世界的な注目も大
きいと思われます。

●社会権規約NGOレポート連絡会議開催のご案内

 残暑(猛暑)お見舞い申し上げます。
 日頃より、人権の伸長にご尽力されていることに心より敬意を表します。
 さて、社会権規約第3回日本報告書審査にむけての事前作業部会が2012年5月に開催
されることになりました(審査は2012年11月あるいは2013年5月)。それに伴うNG
Oレポートの締切は2012年4月1日です。事務局レベルで少しずつ準備をしていました
が、なかなか態勢が整わず、情報提供や連絡が遅れて申し訳ありません。
 つきましては、日程調整をしないままの案内で恐縮ですが、下記のような要領で、
社会権規約NGOレポート連絡会議を開催し、NGOレポート作成にむけた動きを本
格化したいと存じます。出席のほど、よろしくお願いします。
なお、当日の都合がつかない団体・個人でも、第3回日本政府報告書の問題点とNG
Oからの提言、各NGOが担当するテーマや課題について、「文書」参加をぜひお願
いいたします。

日時:2011年8月27日(土)14:00〜17:00予定
場所:(社)自由人権協会事務所 http://www.jclu.org/
〒105-0002 東京都港区愛宕1―6―7 愛宕山弁護士ビル306
(地下鉄銀座線・虎ノ門駅から10分、JR新橋駅から15分)

主な内容:
【報告と提起】第3回NGOレポート作成にあたって(別紙参照)
−荒牧重人、藤本俊明
【情報と意見交換】第3回日本政府報告書の問題点とNGOからの提言
           各NGO・団体が担当するテーマや課題の検討
           −各NGO・団体

※準備の都合がありますので、8月23日(火)までに出欠を事務局の藤本までメール
で連絡していただければ幸いです。
藤本俊明 E-mail:fuji2001@mtd.biglobe.ne.jp

*社会権規約NGOレポート連絡会議事務局:
 荒牧重人 藤本俊明 今井直 旗手明
*連絡会議連絡先:
〒400-8575 甲府市酒折2-4-5 山梨学院大学法科大学院 荒牧研究室
E-mail:aramaki@ygu.ac.jp  TEL 055-224-1267 FAX 055-224-1281 


●社会権規約NGOレポートの作成にあたって(案)
2011年8月
社会権規約NGOレポート連絡会議事務局

1 NGOレポート作成の基本方針
*第3回政府報告書の提出が2009年12月であり、提出時から社会権をめぐる状況に大
きな変化−とりわけ東日本大震災・福島原発事故―が見られることから、政府報告書
の内容は今日的なものではないところがある。NGOレポートでは、第48回事前作業部
会(2012年5月21日〜5月25日)におけるlist of issuesの作成、および第49回委員会
(2012年11月。あるいは2013年5月の第50回委員会か)における審査・総括所見の採
択に寄与する(影響を与える)内容にしていく。
なお、できるかぎり簡潔なレポートにする。ただし、NGOによる検証は、委員会の審
査に資するとともに、「日本」でも活用するので、一定の分量になることはやむをえ
ない。

*第3回政府報告書の問題点および「不足部分」を的確に指摘し、今日の日本におけ
る社会権規約の現状と課題を簡潔に記述する。
→list of issuesの作成、審査、総括所見(懸念と勧告)の採択に寄与するために、
list of issuesの内容―政府報告書の問題点、新たに追加が必要な事項等、∩躋
所見の懸念事項―規約実施の課題、A躋臀蠍の勧告―規約実施に向けての提言
を的確かつ簡潔に示したものにする。

*とりわけ以下の点に留意する。
・第2回の総括所見をどこまで実施しているか、政府の「自己評価」の問題点を指摘
し、NGOとしての「検証」結果を評価として示す。
・政府報告書の「形式的な」内容を克服し、委員会の審査や総括所見の採択に寄与す
る。
〜法や制度の説明のみならず、実態についてもバランスよく報告
〜各分野で報告すべきデータを詳細に提示
〜委員会が採択してきた「一般的意見」をふまえた報告
・規約の実施状況をふまえ、実施の課題を明示する。

2 第3回社会権規約NGOレポートの構成
第1部 全体的検証
1 社会権規約の実施と日本社会(「貧困」拡大、大震災等を含む全体状況など)
 2 報告制度への政府の対応(前回総括所見の達成度評価を含む)
 3 社会権規約と救済制度―裁判所、国内人権機関、個人通報制度等
 4 社会権規約の広報・教育・研修
 5 報告書作成過程における問題点―政府報告書改訂の必要、「政府とNGOの対話」
再設定の必要

第2部 個別的検証(主体別)
 1 女性                 9 ホームレスの人々
 2 子ども                10 難民(申請者)
 3 被差別部落出身者        11 入管収容者
 4 在日コリアン            12 セクシュアル・マイノリティ
 5 外国人(ニュー・カマー等)    13 ハンセン病患者
 6 中国帰国者             14 アイヌ民族
 7 障がいのある人          15 沖縄の人々
 8 HIV感染者及びAIDS患者 

第3部 個別的検証(テーマ別)
 1 労働・雇用              8 自殺(震災関連自殺含む)
 2 社会保障               9 環境・原発
 3 家族・子どもの保護         10 教育
 4 貧困                  11 文化的生活
  5 食                     12 科学技術(情報格差を含む)
 6 居住                 13 国際協力・ODA
 7 健康・医療

第4部 東日本大震災・原発事故と社会権規約
 1 東日本大震災・原発事故における人権保障(総論)
  ―人権を基礎とした復旧・復興と災害対策・原発行政
   社会権規約と関連文書の適用可能性
 2 大地震・大津波と社会権規約
 ―居住、食、健康、十分な生活水準、労働・雇用、子育て、教育等に対する権利
 3 原子力発電所事故と社会権規約
 ―福島県を中心とした被災地、被災地圏外
 ―居住、食、健康、十分な生活水準、労働・雇用、子育て、教育等に対する権利
 4 マイノリティ・「社会的弱者」の権利
 ―子ども(震災遺児・孤児)、医療を必要とする人々、高齢者・要介護者、
   障がいのある人、外国人、少年院入所者・受刑者
 5 救済手続き
 ―人権の観点から震災を検証する機関の必要

3 第3回社会権規約NGOレポートの執筆要領
(1)分量
1項目が英文でA4版2ページに収まるようにする関係上、日本語3000字を目安とす
る。どうしても、2ページ以上に及びそうな場合、項目を分ける。

(2)項目の構成
*上記のような全体構成のもとで、第1部および第4部は参加団体・個人から意見をも
らって事務局が案を作成。第2部および第3部は参加団体・個人が作成。
全体構成における各項目はエッセンスなので、「付属資料」として各団体・個人から
の詳細レポート(本体の補完も含めて)を集録する。
なお、作業部会用に、list of issuesに該当する部分を1パートにすることも検討す
る。

*各項目は、タイトルをつけた上で、(a)list of issuesに該当する質問事項、(b)
問題点の要約、(c)根拠・背景説明、(d)規約の実施や権利の実現に向けた政府・国に
対する勧告という構成を基本にする。

(a)list of issuesに該当する質問事項
*1〜2行程度で、簡潔に記述する。

(b)問題点の要約=「総括所見」の「懸念」に該当する部分
*根拠、背景説明の内容を簡潔にまとめ(5〜8行程度)、この部分だけを読めばその
問題についての概要がつかめるよう心がける。根拠、背景説明の「まえがき」になら
ないよう注意する。
*典型的な事例あるいは典型的なデータがあれば、それを要約に含めることによって
委員の関心を引くことができる。
*末尾に政府報告書のパラグラフ番号と、前回の総括所見で関連の指摘があればその
パラグラフ番号を書き添える。政府報告書に記述がなければ「政府報告書に記載な
し」と書いておく。

(c)根拠、背景説明
*日本の状況をよく知らない委員にもわかりやすいよう、過不足のない説明を心がけ
る。海外との比較があれば、さらにわかりやすくなる。
*抽象的・感情的な表現は用いず、具体的・客観的・論理的に記述する。
*とくに前回の審査で取り上げられた問題については、総括所見の実施状況を含む前
回の報告書(および審査)以降の変化にも焦点を当てる。問題点が中心になるのは当
然だが、建設的対話の観点から、なんらかの前向きな変化があればささいなことでも
触れることを心がける。
*可能なかぎり、記述を裏づけるデータを添える。グラフや表など図版があれば、そ
れも別途提出してほしい。図版のスペースについてはとりあえず上記字数に含めな
い。
*2ページの場合は3〜5つ程度の段落に分け、それぞれに小見出しをつける。
*なぜここで取り上げていることが問題なのか、なぜこのような措置をとらなければ
ならないかについて、規約上の根拠(関連条文の引用)を示すようにする。
*他の人権機関から同様の懸念・勧告があれば引用する。

(d)政府・国に対する提言・勧告=「総括所見」の「勧告」に該当する部分
*政府や国会等がとるべき措置について、なるべく具体的な提案・勧告を行う。
*提案・勧告が詳細に渡るようであれば、最初に全体的・一般的勧告を行い、その後
に具体的措置を列挙する。そうすることにより、委員会が全体的・一般的勧告の部分
を総括所見に活かしやすくなる。

(3)主なスケジュール
*2011年8月下旬   レポート作成の基本方針・内容等の確認
*2011年12月末    参加団体・個人によるレポートの締切
*2012年2月中旬   NGOレポート日本語版完成
*2012年3月下旬   NGOレポート英語版完成・提出
 ※2012年4月1日が提出期限

*2012年5月21日〜5月25日  第48回事前作業部会
*2012年8〜9月    list of issuesに対応したNGO追加レポートを作成
*2012年11月(13年5月)   第49回委員会における審査・総括所見の採択

※この間に、適宜、NGOレポート連絡会議を開催する(政府との対話前、NGOレポート
日本語版完成前、事前作業部会前・後、審査前・後など)。また、政府との対話も適
宜行う。さらに、審査後、審査・総括所見のフォローアップをその体制づくりも含め
てしっかり行う。

(4)データの送付
*原稿は、メールで事務局の藤本俊明(ccで荒牧にも)までお送りください
(テキストファイルまたはワードファイル)。
*レポートの英訳は事務局が責任を持って行う予定ですが、できれば英訳もつけて提
出してくれると助かります。
 なお、詳細なレポートを作成する場合は(「付属資料」として集録)、当該部分の
英訳は原則として提出団体が行うものとする。

*送付先:藤本俊明 E-mail:fuji2001@mtd.biglobe.ne.jp
荒牧重人 E-mail:aramaki@ygu.ac.jp
*連絡先:〒400-8575 甲府市酒折2-4-5 山梨学院大学法科大学院 荒牧研究室
TEL 055-224-1267 FAX 055-224-1281
E-mail:aramaki@ygu.ac.jp

以上





 


 
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