第12回国連犯罪防止刑事司法会議(「コングレス」)2010年4月12日〜19日於ブラジル・サルバドル報告 世界各国から、約4000人が参加!!

第12回国連犯罪防止刑事司法会議(「コングレス」)
2010年4月12日〜19日 於ブラジル・サルバドル 報告
世界各国から、約4000人が参加!!

                                                                                     2010年7月7日
                                           2011年2月4日更新


 先般、第12回国連犯罪刑事司法会議(「コングレス」5年に1回開催)が、ブラジル・サルバドルにて行われ、日弁連からは、松井仁弁護士(福岡・44期)、芝池俊輝弁護士(札幌・55期)、小川政治弁護士(広島・59期)、桑山亜也氏(監獄人権センター)が参加しました。


 報告書を完成されましたので、以下掲載致します。

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2010年7月2日(金)・3日(土)日弁連国際人権問題委員会夏季合宿(於軽井沢)で、
第12回「コングレス」について報告をする、
芝池俊輝弁護士(札幌)、松井仁弁護士(福岡)、
小川政治弁護士(広島)(向かって左から)



 第12回「コングレス」は、約4000名が参加した世界大会・フォーラムです。その内訳は、103カ国の政府代表ら、10の国連機関の代表ら、14の国連系研究機関の代表ら、18の政府間機関の代表ら、47のNGOの代表ら(252名)、199人の個人研究者でした。
 日本政府代表団(団長 樋渡利秋 検事総長、団員は、法務省・検事・国連アジア極東犯罪防止研修所=アジ研が主なメンバーですが、毎回必ず裁判官が1名含まれています。なお、後述の三井明元裁判官は、家庭裁判所調査官を代表団に加えるべきであると1970年頃から主張されていましたが、未だ実現したことはありません。)は、27名でした。日本政府代表団の報告は、『ジュリスト』1411号(2010年11月15日号)に「特集2 国連犯罪防止・刑事司法会議」に掲載されています。(※注3)

 日弁連代表団は、関連委員会の協力の下で各論点にまたがった意見書を作成して提出したほか、議論・情報提供の場においてスピーチで意見表明をし(「テロ対策における人権保障」「人身取引対策における留意事項」)、有意義な情報交換を行いました。

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同様に、報告をする、左から松井仁弁護士(福岡)、小川政治弁護士(広島)



 また、国連NGOであるPRI(Penal Reform International、刑罰制度改革インターナショナル)及びAPT(Association for the Prevention of  Torture 、拷問禁止協会)との共催で、サイドイベント(アンセラリー・ミーティングAncillary Meeting)「刑務所視察拷問等禁止条約選択議定書」を開催しました。
 これは日弁連としては画期的な試みであり、国連の拷問特別報告者マンフレッド・ノヴァック教授(Manfred Nowak教授、U.N. Convention on Civil and Political Rights : CCPR Commentary (N.P. Engel) Feb.1993 が有名です)も特別ゲストとして参加され、また各国政府代表団を中心に約70人の参加者を得るなど大成功を収めました。
 その他のサイドイベントとしてのテーマは、「子どもの拘禁」「被害者の権利」「被害者権利条約」「国際人権教育」「女性受刑者ルール」「児童ポルノ」「受刑者処遇」「死刑」「修復的司法」などでした。

 犯罪防止会議に第3回(1965年ストックホルム、団藤重光などが参加)、第4回(1970年東京)、第5回(1975年ジュネーブ)に日本政府代表団の一員として参加した故 三井 明弁護士(元刑事裁判官・家裁裁判官)が、「日弁連は誇るべき活動をしているが、世界にも視野を広げるべきで、コングレスに参加すべきである」と提起したことをきっかけに、日弁連は「コングレス」(第7回1985年・ミラノ、第8回1990年・ハバナ、第9回1995年・カイロ、第10回2000年・ウィーン、第11回2005年・バンコク、第12回2010年・ブラジル)や「コミッション」(国連犯罪防止刑事司法委員会)(年1回開催 於ウィーン、第3回1994年〜※注1、注2)に長年代表団を派遣し続けて来ましたが、サイドイベントを主催するのはこれが初めてであり、日弁連の国際人権NGOとしての実質的名声を高めており、活動のレベルを一段と向上させたものと言えます。

 「コミッション」は、年に1回国連ウィーン本部で開催されています。国連のニューヨーク本部、ジュネーブ本部は良く知られていますが、ウィーン本部では、「犯罪」や「原子力」に関する事柄が扱われています。UNODC(United Nations Office on Drugs and Crime、国連薬物犯罪事務所)は、ウィーン本部にあり、「コミッション」の事務局機能を果たしています。

 「コミッション」は国連の刑事司法を実質的に運営しており、犯罪防止に関する諸条約(「国連組織犯罪防止条約」=154ヶ国批准、「国連腐敗防止条約」※注4=144ヶ国批准 など。日本は両条約とも批准していません。)の起草作業や採択、多くの基準規則の議論もここでされています。「コングレス」は「コミッション」の諮問機関的な位置付けとなっています。
 なお、刑事司法に関する国連の基準は50以上あります。この国際基準について、「法的拘束力はない」ということを強調する考え方がありますが、国連で世界各国の代表が審議して基準・規則や宣言を作っており、それを「法的拘束力はない」と軽視することは、私は不合理だと考えます。世界の中で尊敬される国になるためには、これらの基準・規則、宣言をいわば「ソフトロー」として守っていく努力をする義務があるのではないでしょうか。



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同合宿において、第12回「コングレス」でのサイドイベントの様子を紹介した場面(約5分間)
スクリーンに映っているのは、サイドイベントでメッセージを述べる
海渡雄一 日弁連事務総長
(日本からライブでメッセージを伝えました。
海渡雄一弁護士は日弁連代表団の団長でしたが、2010年4月から、
宇都宮健児新会長の指名で日弁連事務総長に就任したため、
ブラジルに行けなくなったためです。)



 報告の内容は、今までと同様、充実しています。また、日弁連の関連委員会(国際人権問題委員会、国際刑事立法対策委員会、人権擁護委員会、刑事弁護センター、両性の平等委員会、子ども権利委員会、情報問題委員会、民事暴力委員会など)に情報提供しています。


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同合宿で報告をする、左から芝池俊輝弁護士(札幌)、松井 仁 弁護士(福岡)、
小川政治弁護士(広島)、東澤 靖 日弁連国際人権問題委員会委員長



 また、第16回〜第18回コミッションの報告もブログに掲載していますので、是非ご参照下さい。


・第16回コミッション→「第16回国連コミッション(於国連ウィーン本部)に参加して
・第17回コミッション→「充実している、第17回コミッション(国連・犯罪防止刑事司法委員会、2008年4月、於ウィーン国連本部)の参加報告!!出張者は、松井仁弁護士(福岡)・崔信義弁護士(仙台)です。
・第18回コミッション『犯罪』に関する『国連』ウィーン本部へ、松井 仁弁護士(福岡)参加!!(2009年4月20日〜24日) 第18回国連犯罪防止刑事司法委員会(コミッション)報告


※注1 「コングレス」及び「コミッション」へ派遣された日弁連代表団
「コングレス」
【第7回ミラノ(1985年)】三井明(一弁)、須網隆夫(二弁) 
【第8回ハバナ(1990年)】大川真郎(大阪)、高野隆(埼玉、現在は二弁)、須網隆夫(二弁)、吉峯康博(東弁)
【第9回カイロ(1995年)】大川真郎(大阪)、荒木邦一(福岡)、吉田幸彦(仙台)、段林和江(大阪)、海老原夕美(埼玉)、吉峯康博(東弁)、近藤真(福岡)、山岸和彦(二弁)、須納瀬学(東弁)、茅沼英幸(埼玉)、篠塚力(東弁)
【第10回ウィーン(2000年)】近藤真(福岡)、木村圭二郎(大阪)、吉峯康博(東弁)
【第11回バンコク(2005年)】大谷美紀子(東弁)、山下幸夫(東弁)、海渡雄一(二弁)、近藤真(福岡)
【第12回ブラジル(2010年)】松井仁(福岡)、芝池俊輝(札幌)、小川政治(広島)

「コミッション」
【第3回(1994年)】佐藤安信(在ロンドン、現在は東京大学教授)
【第4回(1995年)】近藤真(福岡)
【第5回(1996年)】田中幹夫(在ドイツ、現在は一弁)、原口薫(在ロンドン、現在は東弁)
【第6回(1997年)】池永満(在ロンドン)、近藤真(福岡)、山岸和彦(二弁)
【第7回(1998年)】近藤真(福岡)、外山太士(東弁)、吉峯康博(東弁)、池永満(福岡)
【第8回(1999年)】海渡雄一(二弁)、吉峯康博(東弁)
【第9回(2000年)】近藤真(福岡)、吉峯康博(東弁)
【第10回(2001年)】近藤真(福岡)、東澤靖(二弁)、吉峯康博(東弁)
【第11回(2002年)】宮家俊治(千葉、現在は二弁)
【第12回(2003年)】近藤真(福岡)、木田秋津(アメリカに留学中、現在は東弁)
【第13回(2004年)】近藤真(福岡)、池永知樹(アメリカに留学中、現在は二弁)、河津博史(二弁)
【第14回(2005年)】近藤真(福岡)、松井仁(ロンドンに留学中)
【第15回(2006年)】宮家俊治(二弁)、作花知志(岡山)
【第16回(2007年)】松井仁(福岡)、村上康聡(東弁、元検察官)、吉峯康博(東弁)
【第17回(2008年)】松井仁(福岡)、崔信義(仙台)
【第18回(2009年)】松井仁(福岡)※日弁連代表団としては派遣されず
【第19回(2010年)】新倉修(東弁、青山学院大学教授)、片山達(二弁)
※第19回コミッションについては、近々報告書をブログに掲載できると思います。


※注2 「コングレス」などについての文献
(1)『自由と正義』2006年7月号「特集2国連の刑事司法と日弁連」(53頁〜98頁)吉峯康博「刑事司法分野における国連ウィーン本部の活動と日弁連」、近藤 真「国連の基準・規則設定の歴史と現状」、松井 仁・山下幸夫・宮家俊治「国連の刑事司法の現状」
(2)【第7回コングレス(ミラノ)1985年】『ジュリスト』867号(1986年)162頁、『少年法通信』(現在は『子どもの権利通信』)21号5頁及び22号16頁の須網隆夫の各論考
(3)【第8回コングレス(ハバナ)1990年】高野隆・須網隆夫・吉峯康博「第8回国連犯罪防止会議の報告」『自由と正義』1991年2月号122頁〜181頁、大川真郎「弁護士の使命と職務妨害−その国際的状況と視点」『自由と正義』1990年11月号20頁〜27頁「国連の『弁護士の役割に関する基本原則』について」同104頁〜114頁など。
(4)【第9回コングレス(カイロ)1995年】「第9回国連犯罪防止会議報告」『自由と正義』1995年7月号76頁〜115頁、「同報告(二)」同8月号112頁〜116頁
(5)【第10回コングレス(ウィーン)2000年】千田恵介「『犯罪と司法に関するウィーン宣言』の意義と犯罪防止・刑事司法分野における国際社会の取組み」(「法律のひろば」2000年12月14頁〜24頁)
(6)【第11回コングレス(バンコク)2005年】『ジュリスト』1297号「特集1国連第11回犯罪防止会議」6頁〜47頁 松尾浩也「第11回国連犯罪防止会議に出席して」(6頁〜10頁)、甲斐行夫「第11回国連犯罪防止会議(コングレス)の概要−個別議題とハイレベルセグメントを中心として」
11頁〜18頁)、千田恵介「第11回国連犯罪防止会議におけるワークショップの概観」(19頁〜24頁)、佐伯仁志「第11回国連犯罪防止会議における『経済・金融犯罪』に関する議論」(25頁〜31頁)、田辺泰弘・小多章裕「『バンコク宣言』の意義と概要」(32頁〜40頁)、伊貝耕「『コンピュータ関連犯罪対策』に関するワークショップの概要」(41頁〜47頁)

※注3 
『ジュリスト』1141号(2010年11月15日号)「特集2 第12階国連犯罪防止・刑事司法会議」
・和田雅樹(法務省刑事局国際課長)「第12回国連犯罪防止・刑事司法会議(コングレス)の概要(32頁〜37頁)
・中島行雄(欧州連合日本政府代表部一等書記官)「第12回国連犯罪防止・刑事司法会議におけるワークショップの概観」(38頁〜41頁)
・大谷潤一郎(在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官)「『サルバドール宣言』の意義と概要」(42頁〜53頁)
・渡部淳一(国連アジア極東犯罪防止研修所教官)「『矯正施設における過剰収容に対する戦略とベストプラクティス』に関するワークショップの概要」(54頁〜60頁)

※注4 
参考文献として、『自由と正義』2008年6月号121頁〜133頁 崔信義「腐敗コラプション)の防止に関する国連条約 第2回締約国会議に参加して−日弁連の今後の取組みについて」参照



「第12回国連犯罪防止刑事司法会議出張報告書」(全151頁)

松井 仁(日弁連国際刑事立法対策委員会委員、同国際人権問題委員会副委員長)
芝池俊輝(日弁連人権擁護委員会委員、同国際人権問題委員会委員)
小川政治(日弁連国際人権問題委員会委員)

・ 報告書本文
・ 別紙1 参加NGOのリスト
・ 別紙2 日本政府代表団のリスト
・ 別紙3 サイドイベントのタイトル一覧表
・ 別紙4 日弁連意見書(英・和)
・ 別紙5−1 日弁連スピーチ1(テロ対策における人権保障)
・ 別紙5−2 日弁連スピーチ2(人身取引対策における留意点)
・ 別紙6−1 日弁連サイドイベントちらし
・ 別紙6−2 日弁連サイドイベント報告・・・松井(桑山)
・ 別紙7 NGO統一声明
・ 別紙8−1 公式議題4(テロ対策)報告・・・松井
・ 別紙8−2 公式議題6(人身取引)+10(移民)・・・小川
・ 別紙8−3 公式ワークショップb(受刑者処遇)報告・・・芝池
・ 別紙8−4 公式ワークショップe(過剰収容)報告・・・芝池
・ 別紙8−5 サイドイベント24(未決勾留)報告・・・松井
・ 別紙8−6 サイドイベント63(児童ポルノ)報告・・・小川
・ 別紙8−7 サイドイベント4(死刑)報告・・・芝池
・ 別紙8−8 サイドイベント2(宗教援助)報告・・・芝池
・ 別紙8−9 サイドイベント3(受刑者の権利条約)報告・・・松井(桑山)
・ 別紙8−10 サイドイベント50(子どもの拘禁)報告・・・松井
・ 別紙8−11 サイドイベント52(被害者の権利)報告・・・松井
・ 別紙8−12 サイドイベント14(刑務所の民営化)報告・・・松井
・ 別紙8−13 サイドイベント21(女性受刑者ルール)報告・・・芝池
・ 別紙8−14 サイドイベント51(身柄拘束の監視)報告・・・松井(桑山)
・ 別紙8−15 サイドイベント18(国際人権教育)報告・・・松井
・ 別紙8−16 サイドイベント23(人身取引議定書)報告・・・小川
・ 別紙8−17 サイドイベント37(被害者権利条約)報告・・・松井
・ 別紙8−18 サイドイベント32(修復的司法)報告・・・松井
・ 別紙8−19 サイドイベント61(刑事司法指標)報告・・・芝池
・ 別紙8−20 サイドイベント60(人身取引のフィルム)報告・・・松井
・ 別紙8−21 サイドイベント10(外国人受刑者)報告・・・小川
・ 別紙8−22 サイドイベント44(法律援助基準)報告・・・松井
・ 別紙8−23 サイドイベント42(人身取引とIT)報告・・・小川
・ 別紙8−24 サイドイベント78(テロ対策と人権)報告・・・松井
・ 別紙9 サルバドル宣言
・ 別紙10 日本政府報告書
・ 別紙11 日本政府からの発言等まとめ

 
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