日弁連・理事会とは何をするのでしょうか?(12) 2009年度日弁連理事を終えて−理事会に新しい風を!−

日弁連・理事会とは何をするのでしょうか?(12)

2009年度日弁連理事会を終えて
−理事会に新しい風を!−



 2009年度理事会の最終回である、第12回理事会の報告をこちらに掲載しておりませんでしたが、昨年度の理事会の総括的なものとして、私が日弁連常務理事退任にあたり東弁「期成会」の会報『Wa』に寄せて書いたものを、以下ご紹介致します。


2009年度日弁連理事を終えて
−理事会に新しい風を!−
                                          
                                   吉峯康博(33期)

 期成会執行部の一員として、執行部会に出席することは極めて不十分で申し訳ありませんでしたが、皆様に次のような仕事をする機会を与えられ心から感謝しています。挨拶が長くなりますがご容赦下さい。

1.『理事会報告』
 慷事会報告』を、最終号が遅れた以外は毎回約1〜2週間後までには発行しました。
内容は、可能な限り正確な『要約』メモに努め、日弁連執行部、説明者、理事の名前も含めて掲載しました。執行部の『速報メモ』は、なぜか理事の名前が書かれていません。もっとも約1ヶ月後に発行される、日弁連『理事会議事録』(平均150頁前後)は極めて正確です。
私の『理事会報告』は、他の理事者(1人だけ不要と言われましたので69人の方)及び日弁連執行部にも毎回配布致しましたが、多くの理事は、『理事会報告』の作成に苦労されているらしく、相当数の方から『参考になる』と言われました。特に『一言コメント』は参考になると言われました。
私のブログ『夢を追い続ける車椅子の弁護士吉峯康博』(
http://yoshimine.dreama.jp)にも、内容と時期を調整の上掲載しました。
な量は、A4サイズで13〜14頁でした。
ゴ成会会員の鈴木敦士弁護士などからありがたいコメントを多々いただき、感謝しています。
東弁・二弁などの理事は、『会派』に推薦されていますが、無派閥(東弁約1550人、二弁約2000人以上)の声は、日弁連にどう反映させるのでしょうか。大きな疑問が残ります。

2.常務理事として
‐鑢獲事として、人権擁護委員会の主査理事を山岸憲司東弁会長からの勧めもあり務めましたが、ほとんど貢献できませんでした。少しでも意味があったのは、
(A)「弁護士会館における障がいのある人などへの配慮のための方策−バリアフリーの実現に向けて−(提言)について(提案)」が人権擁護委員会「常任委員会」で審議され、全体委員会で了承されたこと。
(B)菅家和利さん(足利事件)に対するカンパ運動を行ったこと。
くらいでしょうか。
なお、昨年4月の段階では、主査理事を希望している委員会は4つだけでした。
⊂鑢獲事会は、理事会1日目の朝(午前10時15分〜同45分)に行われます。
私は、常務理事会において、次の2点を執行部に約束してもらいました。
一つは、毎月『自由と正義』に掲載される「弁護士名簿登録等」の「登録取消し」の一覧表のうち、「事由」を「死亡」と「請求」に分けて記載することです(2009年5月)。しかし、事務的に簡単なことである筈なのに、現在のところまだ実現していません。
二つ目は、毎回の理事会や『自由と正義』で、毎月毎に会員数が発表されますが、会員のうち女性会員数がはっきり分かるように明記することを検討することです(2010年2月)。男女共同参画推進本部の趣旨からしても、明記されている方が良いと考えます。日弁連の事務室には、常に女性会員数が掲示されていますので、毎回の理事会での報告や『自由と正義』へ掲載することは難しいことではないはずです。
なお、日本では、1940年に初めて女性の弁護士が3人生まれました。今やその総数は4671名です(2010年4月1日現在)。
資料はできるだけ事前配布にしてもらえるように要望したところ、執行部は努力され事前配布が多くなりました。
ぞ鑢獲事と理事に分ける合理性はないと考えます。基本的には全員が常務理事になることが好ましいと思います。

3.日弁連会長選挙問題
この問題については、期成会執行部や幹事会での議論が足りなかったように思います。
私は、1年前に次のように述べ、期成会から理事に推薦されました
「『司法改革』を進める日弁連の会長選挙にも、約20数年、堀野紀先生等と共に取り組んできました。また、私はこの20数年間、市民のための『司法改革』に取り組んできました。徹底的に市民、国民、子どもたちの『目線』に立つべく努力してきました。憲法と人権を守り、市民が参加する『司法改革』を実現すべきなのです。」(『Wa』2009年1号63頁)
私と同様の政策・意見を有する宇都宮健児弁護士が、2010年4月1日から日弁連会長に就任されました。宇都宮健児新会長は、2009年度・2010年度新旧理事合同協議会(2010年3月19日)の挨拶で、『市民のための第2次司法改革』を実現するために、一生懸命頑張りますと言われました(朝日新聞 2010年4月8日付朝刊 15面 オピニオン インタビュー「弱者が使える司法」−裁判官増やし「ゼロ地域」解消 法的扶助も充実を−参照)。
私は期成会執行部の一員として、可能な限り会長選挙問題の『情報の提供』を行いました。手段は、期成会有志MLに『情報提供』を発信することなどでした。また日弁連会長選挙の『公聴会』(10カ所で行われた。札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡、沖縄、徳島、広島、横浜、東京)のスピーディーな『報告メモ』は、期成会では初めての事だと思います。

4.理事会での発言
理事会での審議については、『なるべく東京は発言をしないようにして、中・小単位会の発言を出来るだけ引き出すように』との前田茂元代表幹事の言葉を私は守りましたが、1期日につき1回だけ発言するようにしました。「子どもの人権」や「国際人権法」に関する『質問』が多かったと思います
例外は、第11回(15分の予定のところ、約2時間15分の審議、日弁連『平成21年度第11回理事会議事録』47〜65頁、71〜75頁、148〜163頁)と、第12回(15分の予定のところ、約30分の休憩を含め1時間30分の審議、日弁連『平成21年度第12回理事会議事録』45〜62頁)での『精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書(案)』についての議論でした。重度の身体障害者である私は、精神障害者(約300万人)の問題・運動や『障害者権利条約』(2006年12月13日国連総会採択、未批准)には、強い関心を持っており、全国の弁護士に『勉強』してもらいたかったからです。
長くなりますが、私の意見は、次のようなものでした(資料19−16−1−3)。


2010年2月19日

日弁連正副会長 御中
日弁連理事会  御中

「精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書」案
についての意見

常務理事 吉峯 康博(東京弁護士会)

 時間の関係で極めて簡潔な説明しかできませんので、このペーパーに私の意見をまとめました。
 この意見書案は、今回の理事会で採択すべきではありません。この意見書案は、来月あるいは4月の理事会に持ち越してでも、慎重に審議すべきです。

1 医療観察法が差別であり、偏見を助長することについて
私は、医療観察法自体が精神障害者に対する「差別」であると考えます。「差別」は、憲法およびB規約(国連自由権規約)に違反しています。このこと自体が許されないことではないでしょうか。
さらに、医療観察法は、「精神障害者は危険だ」という偏見を煽ることになります。政府統計では、精神障害者は300万人とされていますが、精神障害者という概念自体があいまいですし、精神障害者に対する偏見があるために精神科に通院できない人たちもいるはずですから、実際にはもっといるかもしれません。
2 医療観察法に対する日弁連の態度の一貫性の無さについて
 この医療観察法は、日弁連が法成立以前から反対運動を展開してきたものです。反対運動の当初の頃、倒れる前には、私も伊賀興一弁護士と一緒に反対してきました。
  しかし、多くの反対運動にもかかわらず、与党(自民党・公明党)は国会で強行採決をいたしました。その後、指定入院医療機関の病床が足りない等の問題を含めて、重大事件を起こしたことで区別をする不合理さやそれが将来の危険性予測につながってしまうこと、強制入院制度の拡大であることなど、成立前に想定されていた問題点が現実にたくさん生じています。
  ですから、日弁連としては、この法律を廃止すべきという意見を持つのが当然であり、突然の方向転換は大きな疑問です。
  なお、日弁連刑事法制委員会の助言者である精神科医も、医療観察法に対して明確に反対意見を述べられたと聞いています。
3 医療観察法による被害者について
 日弁連は、医療観察法による被害者のことをどう考えているのでしょうか。
  今回の意見書案には、この法律による被害者のことについて、事実に基づいたケースの紹介がひとつもありません。被害者のことをどうでも良いと考えているのでしょうか。
  医療観察法による被害者のことについては、新潟の和田光弘理事が述べたように、不合理なケースがいくつも明らかになっています。添付した資料1、2に出てくる医療観察法による被害者のことをどう考えるのでしょうか。
4 障害者権利条約との関係について
 この意見書には、障害者権利条約について一切触れられていません。
 障害者権利条約は、近い将来批准されることが明らかです。その際には当然に医療観察法との関係が問題になるでしょう。障害者権利条約が批准されれば、法律以上の実体法規範になるのです。
にもかかわらず、法律専門家の集団である日弁連が提出する、精神障害者の問題を扱っている意見書の中にこの「障害者権利条約」について全く言及がないというのはとても恥ずかしいことです。
5 『会内合意の形成』について
  日弁連刑事法制委員会の中にも意見の対立があり、その対立は未だ克服できていません。
  また、日弁連人権擁護委員会『障がいのある人に対する差別を禁止する法律に関する特別部会』(前委員長 竹下樹義、現委員長 野村茂樹、現事務局長 黒岩海映)には20数人の委員がいますが、ほぼ全員がこの意見書案に反対です。しかも、この部会には、身体障害者(目の見えない人、耳が聞こえない人、車イスを利用している人)が10人近くいます。また、この部会には、政府の「障がい者制度改革推進本部」(本部長:鳩山由紀夫首相、約4年間を改革の集中期間とし、関係省庁の施策の見直しや制度改革の検討などを行う)の事務局長である東俊裕弁護士【熊本県弁護士会。障害者権利条約(2006年12月に国連総会採択)の国連本部での審議に約5年間、日本政府の顧問としてかかわられています】や同会議のメンバーである大谷恭子弁護士(差別禁止法特別部会の委員)、竹下義樹弁護士(差別禁止法特別部会の前委員長)などがいて、この意見書に反対しておられます。
  他にも、日弁連高齢者・障害者委員会(委員長 錦織正二)も、この意見書案に反対です。
  にもかかわらず、刑事法制委員会は、反対意見を持つ委員会との意見交換会など一度も開いていません。意見交換を通じて、お互いに勉強し、意見を止揚することが必要ではないでしょうか。そういう会内対立がある状況の中で、なぜ今の段階で、無理矢理意見書案を通そうとするのでしょうか。このようなやり方では、日弁連に対する信頼が崩れてしまいかねないという懸念が残ります。現に精神科医の中には、日弁連は矛盾した態度を取っているので信用できないと言っている医師もいます。
6 施行状況の政府報告と障がい者制度改革推進会議について
 医療観察法は、その附則4条において、「政府は、この法律の施行後5年を経過した場合(2010年7月15日)において、この法律の規定の施行の状況について国会に報告するとともに、その状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その検討の結果に基づいて法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする。」と規定しています。
  それゆえ、今年7月15日以降に、医療観察法の施行状況について、政府(法務省、厚生労働省)による国会報告があるはずです。
  また、「障がい者制度改革推進会議」は、月2回のペースで審議を始めました。審議の内容は全て公開されています。この推進会議の議論対象には、医療観察法の問題も当然含まれています。政権交代が実現して民主党政権になった現在、医療観察法の廃止に向けても有利な環境になっていると思います。
 よって、日弁連としては、今回(夏以降)提出される政府報告を踏まえた上で日弁連の意見を出すべきであり、それ以前に、日弁連内に意見の対立がある状況で、拙速に意見を出す必要性はありません。

添 付 資 料
資料1 東京新聞記事2008年9月1日
資料2 東京新聞記事2009年2月13日



 

私が最終的に提出した『修正案』(執行部案は一言も削らずプラスした部分は6カ所であり、執行部案には一言も触れられていなかった障害者権利条約のことや、争いのない歴史的事実などの内容でした)は、賛成7 棄権5 反対多数で否決され、執行部提案が成立しました。急ぐ必要のない議案なのに、無理に採決することは『会内合意の形成』からも問題を残しました。関弁連の理事も、採決を無理してせずに、次回(2010年4月)以降に延ばすべきだと主張されていました。
ただし、単位会の会長など多くの方からは、「今回の議論によってこの問題について本当に勉強になりました。」と言われました。

5.理事会をもっと風通し良くする
_餔が理事会を傍聴するには、会長の『許可』が要りますが、『届出制』にすべきです。また、配付資料を傍聴者にも配布するかどうかの問題があります。私が2007年度及び2008年度に傍聴した際には、東弁役員の好意により入手することができました。
理事会をマスコミ(新聞記者やテレビ)も、原則的に傍聴できるよう運用などを変えるべきです。
M事会の「非公開的運用」は、時代遅れです。現在の規則・運用は、「市民・国民のための司法改革」の理念に反していると考えます。
ち翰事共通のMLがありません。私は努力して全理事に発信できるようにしていましたが、全理事共通MLを執行部は作るべきです。そのMLは情報交換などにとって極めて大切と考えます。

6.残念だったこと
2009年11月24日に、期成会「若手の会」が結成されました。私は、20年以上前から期成会に「若手の会」が出来ることを望んできましたので、大変嬉しく思いました。
私は、設立記念パーティーに日弁連理事として招待をされました。しかし残念なことに、パーティー会場はバリアフリーの対策が全くなされていなかったため私は参加することができませんでした。
私は、善処を望みましたが、「若手の会」から1カ月以上経ってから「・・・今から会場の変更ということは困難なのです。・・・」との返事でした。
この件から、「若手の会」の方々が教訓を学んでくれれば望外の喜びです。

7.期成会会則について
 先般の2010年3月26日(金)期成会定時総会において、期成会新会則が採決されました。
私は、当日下記の点などについて意見を述べました。
。仮髻別榲)には「本会は、自由、正義、平和、倫理及び基本的人権を重んじ、次の目的を達するために必要な活動を行う」と下線部分を加えた方がよいのではないか。
■仮鬮い箸靴董国際人権法の普及及び高齢者・障害者などの会員に対する『合理的配慮』を行うこと」を加えるべきではないか。
2饌Г魏定する場合には、前の会則に基づいて行われるべきであり、その定足数には達していないのではないか。
私の提案について、是非今後ご検討して頂ければ幸いです。

8.重度の障害者である当職を日弁連理事に推薦して下さった期成会の皆様に心から感謝していること
〇笋蓮¬鵤掲半前に脳出血で倒れました。この時のことを妻は「倒れた当初は昏睡三週間、意識(記憶)もその後二ヶ月は失く、覚睡してからは私の名も呼べず、簡単な単語も言えなくて、このまま言葉を永遠に失ってしまうのではと心配いたしました。」と述べています。また、日弁連の理事就任については、妻からは、「責任を果たせないのでやめて下さい。」と言われました。
∋笋惑晶亰譴慮絨箴匹里燭畍什澆皹θ梢繁竅磧難聴、右視野狭窄などがあります。従って、理事会でのやり取りについて、私に聞こえるのは7割程度であると思われます。
昨年の3月、2009年度理事会の開始前に、聴力などの状態を理由に、私を理事に推薦して下さった期成会の前田茂代表幹事を通して、「聴力などが悪いので、理事会の様子を録音させて頂きたい」と日弁連事務総長に申し入れましたが、残念ながら許可が出ませんでした。私は今でも許可が出ないのは『不合理』であると思っています。私の右半身麻痺及び右耳の聴力が悪いことなどは『病気』であり、自分の力や努力ではどうにもならないからです。日弁連執行部のこの点の対応は不合理な運用であり、『差別』ではないかと考えます。今後、二度とこのようなことが起こらないように改善すべきだと思います。実際には、鈴木大祐前理事(東弁、49期、法友全期会推薦)のテープ起こしに近い詳細なメモ及び和田光弘前理事(新潟、同期33期、元アムネスティ日本支部長)の緻密且つ精度の高い作業のおかげで、テープ録音なしで毎回理事会での議事を理解することが何とか出来ました。改めてお二人等に心から感謝申し上げます。
また、日弁連執行部、理事及び職員の方々には、忘年会の場所を変更して頂くなど、様々な『合理的配慮(reasonable accommodation)』(『障害者の権利条約』第2条など)をしていただきました。心から感謝しております。と同時に、自分を含め、間もなく批准されるであろう『障害者の権利条約』を勉強する必要性があると痛感しています。

                                         以上
(2010年4月9日)


 
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