消費者庁で消費者被害者はどう救済され、どう防止されるか

消費者庁で消費者被害者はどう救済され、どう防止されるか

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 先般、2008年6月21日(土)午後1時〜午後4時、霞ヶ関の弁護士会館2階講堂「クレオ」にて「消費者行政一元シンポジウム−消費者庁で消費者被害はどう救済され、どう防止されるか」が開催されました。

 4月23日、福田総理は、来年度に消費者庁を発足させることなどを明らかにしました。この総理の発言を受けて、消費者行政推進会議は、6月初旬に報告書を取りまとめる見込みとなっています。
 そして、6月末頃に見込まれる、いわゆる「骨太の方針2008」に、消費者行政推進会議報告書の重要部分を盛り込むと予定されています。
 しかし、秋に予想される臨時国会までの準備期間は短く、しかも具体化すべき法制度などの課題は多数あります。
 このシンポジウムでは、来年度の消費者庁の発足を確実にするととともに、違法収益の吐き出しの制度をはじめとして、発足時において備えるべき法制度が明確にされました。

 内容が充実した、素晴らしい企画でした。
 約230名の参加者がありました。

 進行次第は下記のとおりです。

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コーディネーターの石戸谷豊弁護士(横浜弁護士会)

・開会のご挨拶
  宮崎誠(日本弁護士連合会会長、大阪弁護士会)
消費者行政推進会議とりまとめについて
  吉岡和弘(弁護士、消費者行政推進会議委員、仙台弁護士会)
・これまでの被害事例とその問題点
  各弁護団の検討と報告
・パネルディスカッション
 パネリスト
   佐野真理子(主婦連合会事務局長、消費者行政推進会議委員)
   吉田直美(盛岡市消費者生活センター主査)
   中村雅人(消費者行政一元化推進本部本部長代行、東京弁護士会)
   池本誠司(消費者行政一元化推進本部副本部長、埼玉弁護士会)
   江野 栄(消費者行政一元化推進本部事務局次長、秋田弁護士会)
コーディネーター
   石戸谷豊(消費者行政一元化推進本部事務局長、横浜弁護士会)

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発言する中村雅人弁護士(東京弁護士会)と、
主婦連合会事務局長 佐野真理子さん

 
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発言する池本誠司弁護士(埼玉県弁護士会)


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発言する森まさこ参議院議員(自民党)
森まさこ議員が持参された自民党PTの資料は下記に掲載してあります。

 
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発言する枝野幸男衆議院議員(民主党)


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発言する吉田直美さん(盛岡市消費生活センター)

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会場の様子

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木村良二日弁連副会長(横浜弁護士会)、
飯田 隆 元日弁連副会長(第二東京弁護士会)など


 パネルディスカッションの後、質疑がありました。
 私は、江野 栄 弁護士に次のような質問をしました。
「今日は大変勉強になりました。ありがとうございました。私は、日弁連・国際人権問題委員会の副委員長をしていますが、江野先生にお聞きします。先生のレジュメにある『違法収益吐き出しによる被害者への分配制度』(139頁)『国境を越えた消費者被害の救済』(同頁)について、少し詳しくお話しいただきたいと思います。国連ウィーン本部では、「犯罪」「刑事司法」を扱っていますが、そこでは消費者被害に有益な議論もしています。(※注2)

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発言する 江野 栄 弁護士(秋田弁護士会)
同弁護士のレジュメは、注1に全文掲載しています。


 江野弁護士からは、次のような説明がありました。
「昨年7月にOECD(経済開発機構)の理事会で消費者の紛争解決及び救済に関する勧告が出ました。その中で、加盟国各国は紛争解決及び救済の効果的な国内枠組みを作りなさいといっており、行政が消費者の救済を行うために民事訴訟において代表者として活動することも勧告に含まれています。この中で、その制度を作るにあたって、国境を越えた消費者紛争について外国の消費者も利用しやすいものにすべきという趣旨の下りがあります、これが第一点。二つ目は、吉峯先生にご指摘頂いた点と関係してくるかもしれませんが、日本の事業者が不正に得た収益を海外に移転しているというということが沢山あり、先程のワールドオーシャンファーム、エル・アンド・ジー、近未来通信など報告の通りです。その逆もあり、ナイジェリアの詐欺集団は日本を経由してマネーロンダリングをしており、先ごろ、日本の警察が摘発をしました。被害者から不正に得た犯罪収益、違法な収益が世界各国に移転され、これをどこかの国が凍結した場合、被害者が沢山いる国にどうやって戻していくか、2国間又は多国間ルールがないのが現状です。ヤミ金融の五菱会のケースではスイスから29億円の返還を受けるための交渉に2年以上かかりました。本来は被害者のお金なのだから被害者に返すべきだというのが一般の考え方だと思うのですが、これを被害救済を促進する観点から多国間でどのようにルール作りをしていくのかということが今後の課題なのではないかと考えています。」

 OECD理事会勧告については,こちらをご参照下さい。 http://www.consumer.go.jp/seisaku/cao/kokusai/oecd.html


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発言する国府泰道(こくふやすみち)弁護士(大阪弁護士会)



・今後の取り組みについて
  鈴木浩美(消費者行政一元化推進本部事務局次長、仙台弁護士会)
・閉会の挨拶
  木村良二(日本弁護士連合会副会長、横浜弁護士会)


 シンポジウム終了後、吉岡和弘弁護士、江野弁護士と若干話をしました。
 その際、私は江野弁護士に「是非、国連ウィーン本部注3に、消費者問題対策委員会の方もいらっしゃいませんか? クレサラの被害などは、台湾、韓国などで急速に広がっており、日本の消費者運動を世界に紹介するとともに、世界の議論も学ぶ意義は大きいのではないでしょうか。」というような話しました。


 当日配布された資料(152頁)などを、一部掲載します。

・ 「消費者のための新組織と地方の消費者行政」(省略)
      弁護士 吉岡和弘(1〜6頁)
・ 「消費者行政推進会議取りまとめ〜消費者・生活者の視点に立つ行政への転換」
      消費者行政推進会議(7〜46頁)
・ 「『消費者行政推進会議取りまとめ』についての会長談話」
      日本弁護士連合会 会長 宮崎誠(47頁)
・ 「消費者権利擁護官法案(通称:消費者オンブズパーソン)」
      民主党「人権・消費者調査会」資料(49〜68頁)
・ 「第1次勧告〜生活者の視点に立つ「地方政府」の確立〜」(30頁部分抜粋)
      地方分権改革推進委員会(69〜70頁)
・ 「基本方針2008(素案)」(19頁部分抜粋)
      経済財政諮問会議(71〜72頁)
・ 「地方消費者行政の抜本的拡充を求める意見書」(省略)
      日本弁護士連合会(73〜81頁)
・ 「消費者被害の集団的救済に関する法整備を求める意見書」(省略)
      日本弁護士連合会(83〜100頁)
・ 「これまでの被害事例とその問題点」関係資料
    「パロマ製ガス湯沸器事故とその問題点」
       弁護士 山本雄大(大阪弁護士会) (101〜103頁)
    「こんにゃくゼリー窒息被害事件」
       弁護士 杉浦英樹(愛知県弁護士会) (105〜106頁)
    「NOVA事件報告」
       弁護士 黒木理恵(大阪弁護士会) (107〜109頁)
    「富士見市認知症姉妹次々訪販リフォーム被害にみる問題点」
       弁護士 拝師徳彦(千葉県弁護士会) (111〜113頁)
    「【抵当証券被害】大和都市管財事件」
           弁護士 五十嵐 潤(第二東京弁護士会) (115頁)
    「近未来通信事件報告」
       弁護士 只野 靖(第二東京弁護士会) (117〜119頁)
    「株式会社エル・アンド・ジー事件について」
       弁護士 和田聖仁(東京弁護士会) (121〜122頁)
    「ワールドオーシャンファーム事件について」
       弁護士 栗原 浩(第一東京弁護士会) (123〜124頁)
・ パネルディスカッション関係資料
    「消費者情報一元化法」(仮称)のイメージ
        弁護士 中村雅人(125〜128頁)
    「製品安全法(消費者安全法)のイメージ」
       弁護士 中村雅人(129〜130頁)
    「取引・信用分野の到達点と横断的法制度の課題」
       弁護士 池本誠司(131〜134頁)
    「消費者行政一元化と地方消費者行政の抜本的拡充」
       弁護士 池本誠司(135〜138頁)
    「違法収益吐き出しによる被害者への分配制度」
       弁護士 江野 栄(139〜141頁)※注1に全文掲載しました
    「新・地方消費生活センターのイメージ」
       盛岡市消費者生活センター 吉田直美 私案(143〜144頁)
・ 「今後に向けた運動提起」
    弁護士 鈴木裕美(145〜152頁)
・ 「消費者被害事件について当調査会と各省庁の対応の経過」
    自由民主党政務調査会消費者問題調査会事務局(別冊)
・ 「パンフレット」
    日本弁護士連合会(別冊、下記に掲載しています)


注1
違法収益吐き出しによる被害者への分配制度
−消費者行政推進会議取りまとめと日弁連の提言』 
                         
弁護士 江 野 栄

違法収益吐き出しによる被害者への分配制度論の整理

○消費者被害の集団的救済制度(民事手続)
・行政・適格消費者団体による金銭請求訴訟制度→6/19意見書
・父権訴訟(parens patriae suits)
・行政による裁判所に対する救済命令の申立制度

○違法収益の剥奪(行政手続、刑事手続)
・課徴金制度、民事制裁金制度(Civil Penalty)
・刑事判決による没収・追徴、罰金
           →犯罪被害者財産による被害回復給付金支給法

【違法収益吐き出しによる被害者への分配制度を整備する必要】
○悪質事業者のやり得を許さない→公正な市場の実現、消費者の市場に対する信用確保
○悪質事業者の資産を効果的に確保する必要←資産の散逸、隠匿
○集団的・統一的・公平な被害救済の必要
 ←個別民事訴訟制度では救済が不十分
   ・少額被害→費用倒れ→泣き寝入り
   ・経済力・情報力の格差
   ・証拠の偏在
○被害拡大の防止
○すき間事案への対応
○国境を越えた消費者被害の救済→国内外の消費者が利用しやすい制度

【6月13日「消費者行政推進会議取りまとめ〜消費者・生活者の視点に立つ行政への転換」4頁】
 すき間事案への対応や横断的な規制体系の整備のため、新法の早急な制定に向け取り組む。さらに、父権訴訟、違法収益の剥奪等も視野に入れつつ、被害者救済のための法的措置を進める。

【2月15日 日弁連「消費者庁の創設を求める意見書」14頁】
(要旨)
「民事手続きによる違法収益吐き出しと被害者への分配制度」として、「消費者庁」が被害を受けた消費者全体のために事業者に対する損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴判決に基づく損害賠償金を被害者に分配することができる制度が導入されなければならない。
 →そのために、消費者庁に付与すべき権限
  1.証拠収集権限
    a. 事業者からの報告徴収
    b. 立入調査
    c. 第三者への照会権限
    d. 裁判所の許可による捜索差押権限(※証拠保全、刑事手続ではない。)
  2.被害拡大防止のための権限
    違法な事業活動の停止命令申立権限(※アメリカのInjunction類似の制度)
  3.資産保全のための権限
    資産の凍結命令申立権限
  4.消費者を代表して損害賠償請求訴訟を提起する権限→6/19意見書
  5.被害者への分配のための権限
    換価・被害者への分配許可申立権限

【6月19日 日弁連「消費者被害の集団的救済に関する法整備を求める意見書」】
 1.消費者被害の集団的救済のための消費者紛争解決制度の創設
  (1)行政及び適格消費者団体による消費者被害救済集団訴訟制度
  (2)集団的消費者紛争調停制度
 2.各制度のあり方
  (1)消費者がメリットを十分に実感できるような制度にすべきである。
  (2)団体等に対し、
    1)公私の団体に対し照会をして回答を求める権限
    2)捜査機関を含む他の行政機関に対する資料提出要求権限
    3)裁判所に対する証拠保全申立て権限
   等を付与すべきである。
  (3)消費者被害の国際化に対応するため、国内外の消費者が参加しやすい制度とすべきである。
 3.滞納処分のあり方等について
   消費者の不法行為による損害賠償請求権と租税債権との優先関係、消費者の被害に由来して事業者が形成した財産に係る滞納処分のあり方について、被害救済を優先する観点からの改善を検討すべきである。

※行政が消費者被害救済集団訴訟を担う必要性・許容性
 1.事業者と消費者の情報力・経済力の格差を補う必要
 2.事業者に証拠が偏在 → 行政(捜査機関を含む)が収集した資料を活用できる
 3.資産の保全を容易にする(担保その他)
 4.多数の消費者の適正・迅速な被害救済は単なる私益の実現と矮小化できない。
   →行政規制のすき間を埋める必要
   →被害拡大と新たな被害の予防
   →民事ルールを守らない悪質事業者を排除して公正な市場の実現を図ることが消費者の利益のみならず民事ルールを守る善良な事業者の利益にもなる。 


注2 2007年5月の『出張報告書−第16回国連犯罪防止刑事司法委員会・コミッション・国連ウィーン本部−』別紙19「国連ウィーン本部のコミッション(国連刑事司法委員会)に対する今後の日弁連の関わりについて」(吉峯康博)84頁『サイドイベント(アンセラリーミーティング・NGOミーティング)に参加するだけではなく、主体的に企画することを検討すべきである。「NGOのリーダーがいない。」「主要な人権NGOの参加がない」等の声はあるが、国連の刑事司法の会議・フォーラムにより主体的に参加することの意義は余りにも大きい。テーマとしては、「女性に対する暴力」「ヤミ金融対策・消費者問題(この問題は韓国、台湾などにも被害者が急速に広がっているそうである)」など考えられる。別紙17の1頁の相澤恵一国連アジ研所長との会話も一例として考慮したらどうだろうか。』、別紙17「現地で交流した人物」1頁『相澤恵一氏(国連アジア極東犯罪防止研修所所長)
→アジ研の代表としてスピーチもされた。 当方(村上康聡弁護士・東京弁護士会、松井仁弁護士・福岡県弁護士会及び当職)から「今後、日弁連として、ヤミ金融対策・消費者問題等に関するテーマで、2年後のコミッションのサイド・イヴェント等でUNODCとともにプレゼンテーションをすることによって積極的な貢献をすることも考えられるかもしれないが、どうか。」旨尋ねたところ、同氏は「アジ研として協力できるところがありそうなので、そちらから要請があれば前向きに考えたい。協力は惜しまない。これからは、犯罪防止の観点において政府と日弁連が互いに、また、それぞれの分野で貢献しているところがあれば、これを積極的にアピールすることは望ましいことである。」旨述べていた。』など参照。


注3 2008年10月8日(水)〜10月17日(金)に『第4回組織犯罪防止条約締約国会議』が行われます。2年前の会議の報告書(「第3回国連国際組織犯罪防止条約締約国会議参加報告書」松井仁弁護士(福岡県弁護士会)、本田正幸弁護士(東京弁護士会))はあります。


注4
私の書いたブログを読んで下さった方より、下記のようなコメントを頂きました。ご本人にご了承いただき、コメントを以下掲載させて頂きます。
お読みいただき、感想などを寄せて下さることは本当に嬉しいことです!!

『視覚的でとてもわかりやすいすばらしいブロクですね。
実は、私も久々に内容の濃いシンポだった、記録しておけばよかったと後悔していたところでした。
先生のこのプロク、仲間に転送してよろしいでしょうか。
緻密に取材していただき、どうもありがとうございました。』
(吉岡和弘弁護士)

『かなり手間のかかる作業を手際よくおまとめいただき、有り難うございました。広く転送して活用させていただきたいと思います。』
(中村雅人弁護士)

『たいへん詳細な内容でびっくりしました。どうも、何をやっても批判されることが多く(笑)、誉められるのはなかなか新鮮な気分です。
とりわけ、違った分野を専門とする先生からご意見をいただいたことは、うれしい限りです。今後ともよろしくお願いします。』
(石戸谷豊弁護士)

『先日のシンポではたいへんお世話になりました。
また,ブログにも掲載をいただきありがとうございます。
早速拝見しましたが,シンポに参加していない方にも,シンポの熱気が伝わるような臨場感あふれる内容ですね。
10日前のことがリアルに思い出されました。』
(盛岡市消費生活センター 吉田直美さん)」

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